積み替えに関するベストプラクティス

漁獲物の海上積み替えに関する政策の世界的な改革により違法漁業への取り組みが前進

積み替えに関するベストプラクティス
Transshipment
The Pew Charitable Trusts

概要

世界の商業漁業では、船舶間での漁獲物の積み替え方法が非常に大きな役割を果たしています。年間何百隻もの冷蔵貨物船(漁獲「運搬船」)が何千隻もの漁船から新鮮な漁獲物を受け取り、港の加工場まで運びます。

ただし、世界の漁業に多大な影響があるにもかかわらず、積み替えに対する規制の適用と監視は十分ではありません。特に海上での積み替えにおいては、それが顕著です。このすき間があることで、漁獲高の報告を偽ったり、怠ったりといった不正行為の余地が生まれており、結果として、不正な漁獲から生じた年間数百万ドルのマネーロンダリングが行われています。1このような環境は武器や麻薬の密輸、および人身売買を誘発するような状況を助長しています。2

積み替えの実施方法を改革することは漁業を健全化し、違法行為を確実に検知し、抑止するために極めて重要です。

The Pew Charitable Trustsでは、すべての船籍国、沿岸国、港湾国、および関連する地域漁業管理機関(RFMO) の成員に対し、本書で概説するベストプラクティスが実施されるまで海上における積み替えの禁止を呼びかけ ています。そうすることで、積み替えが合法的かつ検証可能な行為であり、IUU、すなわち(違法(Illegal)、無報告 (Unreported)、無規制(Unregulated))な漁業に大きく関わるものではないことを保証できます。また、これらを 実践することで、RFMOが積み替えに関する完全かつ正確な情報とデータセットを把握できるようになり、 効果的な漁業管理と品質管理を支援できます。ただし、IUU漁業を減らすためには、すべてのレベルの 関係当局でコンプライアンス違反の証拠が提出された際にすぐに行動できるよう備えていなければなり ません。

Transshipment
The Pew Charitable Trusts

報告に関するベストプラクティス

より完全で統一的な報告書を作成するため、関連機関は以下のことを行う必要があります:

  • 積み替えの場所または積み替える漁獲物の漁獲水域にかかわらず、あらゆる積み替えについて、関係する 船籍国、沿岸国、港湾国、およびRFMO事務局に報告を求める。
  • 国連食糧農業機関(FAO)が策定する予定の標準設定データの種類と形式が含まれるよう、すべての積み替 え報告の通知、申告、および報告フォームを更新する。最低限収集が必要な情報としてFAOの寄港国措置協 定の附属書AおよびCで指定された情報、さらに混獲の積み替え量と種類の詳細を報告に含める。
  • 特定のRFMO協定海域内での積み替えを認可されたすべての船舶に対し、当該海域への進入に際して関係 する船籍国およびRFMO事務局に向けた電子通知の提供を義務付ける。この通知には準リアルタイムの 船舶監視システム(VMS)による報告、およびオブザーバーカバレッジ要件への準拠についての確認が含 まれているものとする。
  • 積み替えを認可されたすべての船舶は、積み替えが実施される海域に関わらず、24時間以上前に関係する 船籍国、港湾国、沿岸国、およびRFMO事務局に対して電子的な事前通知を提出するとともに、各積み替え 作業の実施後24時間以内に個別に申告を行い、その後、漁獲物の最初の水揚げを行うものとする。
  • 船舶からの報告を検証するための独立した手段として、オブザーバーに対して、積み替え後24時間以内に 関係する船籍国、沿岸国、港湾国、およびRFMO事務局へ電子報告フォームを提出することを義務付ける。

監視に関するベストプラクティス

効果的な監視を行うため、RFMOその他の関連機関は以下のことを行う必要があります

  • 国または地域のどちらの管轄海域であっても、すべての積み替えについて漁船と運搬船の両方の船上で 100%のオブザーバーカバレッジ(人手による方法、電子的な方法、あるいはその組み合わせによる)を実施 するよう求める。オブザーバーからの情報を収集するためのすべてのプロセスや手続きについて、最低限の 標準を設定する必要もあります。
  • 積み替えに従事することを承認されたすべての船舶が、訓練された十分な人員を擁する認定 オブザーバーの独立したシステムにアクセスできることを保証する。これらの認定オブザーバーシステムは、 関係するRFMOによって認定された国または地域のオブザーバープログラムに属し、科学的調査および 法令遵守という両方の目的のために情報とデータを収集することを義務付けられている。
  • 積み替えに従事することを承認されたすべての船舶に対して、関連当局が準リアルタイムで厳格に港から 港まで監視し、追跡するために役立つ船内VMSユニットの装備と運用を求める。
  • VMSユニットで故障または障害が発生した場合の手動報告の用意を義務付ける。これには、すべての 運搬船へのセカンダリー(バックアップ)報告ユニットの設置要件や、VMSユニットの故障や障害が継続する 場合は直ちに港に戻る要件が含まれる。

データ共有に関するベストプラクティス

データを効果的に共有するため、関連機関は以下のことを行う必要があります

  • 関係する船籍国、沿岸国、港湾国当局、およびRFMO事務局で積み替えについてのデータ共有手順を 確立し、調整する。

まとめ

合法的で強固な、そして検証可能な海産食品のサプライチェーンを確保し、違法行為が発生する可能性を減 らすためには、積み替えに関する明確なルールの確立が不可欠です。グローバルな積み替えの規制に携わ るすべての関係者が上記のベスト・プラクティスを導入すれば、漁獲物を海から陸へ輸送するための手段で ある積み替えをより効率的かつ安全に行うガイドラインが策定されることが業界関係者、消費者、政府に よって確認され、IUU漁業の抑制にも役立ちます。

巻末注

  1. MRAG Asia Pacific, “Towards the Quantification of Illegal, Unreported and Unregulated (IUU) Fishing in the Pacific Islands Region” (2016), http://www.ffa.int/files/FFA%20Quantifying%20IUU%20Report%20-%20Final.pdf.
  2. Christopher Ewell et al., “Potential Ecological and Social Benefits of a Moratorium on Transshipment on the High Seas,” Marine Policy 81 (2017):293–300, https://doi.org/10.1016/j.marpol.2017.04.004.