プログラムの構成とレビュー

プログラムでは役割と責任を明確に定義する

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プログラムの構成とレビュー

概要

地域漁業管理組織(RFMO)の電子監視(EM)プログラムは、RFMO全体で設計する、または国または地域の プログラムからなる分散型システム、という2種類の方法に体系化できます。どちらのタイプを導入するかはプログラムの目的、RFMOの歴史、および地理的条件によって決まります。体系化に伴い、これらの要素を見れば、ベンダーの契約方法、ハードウェアとデータで開発する標準規格の方向性が判明し、場合によっては国内法の修正が 示唆されています。 EMプログラムを導入した後は定期的に進捗状況を見直し、有効性を保つための改善を実施します。

プログラムの構成

人間の監視担当者は海上で漁業データを収集することによって、管理者が監視を改善するために重要な役割を果たしています。ほとんどのRFMOでは一元管理型の監視プログラム、または各国のプログラムや準地域的なプログラムを用意しています。現在運用中のモデルは、将来のEMプログラムの構成方法を大きく左右する可能性があります。表1では3種類のプログラムモデルのメリットとデメリットをまとめています。

アクセスと相互運用性

RFMOでEMプログラムの構成を決定したら、ビデオ記録を扱う方法とデータへのアクセスが許可される機関を 決定する必要があります。漁船の航行が複数の排他的経済水域(EEZ)と公海にわたることを考えると、システ ムは複雑になるかもしれないため、RFMOでは役割を明確にした詳細なチャートを作成して配布する必要があ るでしょう。1

関係するレビュー担当者や当局がEMデータにアクセスできるようにするために、送信するビデオは標準化して、 レビュー担当者が使用するあらゆるソフトウェアと互換性があるファイルフォーマットになるようにします。この ようにすることで、一元化されたデータに必要な「クリーニング」作業が減り、レビューを効率化できます。2

ベンダー契約とメンテナンス

プログラムの構成に合意があれば、RFMOでEMベンダー1社と契約するか、合意済みの基準に基づいて数社の ベンダーと契約するか決定するのにも役立ちます。(図1を参照。)

漁業管理者がEMベンダーを選定する際には、メンテナンスの問題に迅速に対応できるように、ベンダーと乗 組員の責任を明確にした適切な整備計画についても検討する必要があります。漁業者にはレンズをきれいにし たり、カメラの視界を遮らないようにしたりするなど、EMの基本的なメンテナンスを実施することが求められる かもしれません。RFMOではEMシステムの修理の手順も導入し、漁船が長期間監視されないまま放置される ことがないようにします。

の回収

ベンダー契約に対するアプローチの検討時に利害関係者は、コストについて、またコストを回収できる方法について検討します。漁業資源は公共の利益に属するため、RFMOや消費者などの利害関係者は多くの場合、漁業が合法的で検証可能であることを証明するコストを旗国が負担するように求めます。一部のRFMOはコスト面の懸念があるためEMシステムの導入をためらっていますが、EMに関する多数の報告は、オブザーバーを雇用するよりEMシステムのコストが低くなることを明らかにしています。3

時間の経過とともにすべてのコストを回収できるわけではありませんが、EMに関連するコストは以下のように分類できます:

  • 船内コスト: EMハードウェア、設置、運用のコスト。
  • プログラム管理費: 地域または国のプログラムのための人件費。通常、このコストの配分が議論の焦点になります。
  • 政策および規制の立案コスト: 関連する規制の策定や政策協定の締結。この費用は漁業管理者が負担する場合があります。
  • 分析コスト:EMデータのレビューと分析を行い、レポートを作成します。必要なレビューの分量や割合にもよりますが、ビデオのレビューはEMプログラムの中で最もコストがかかる可能性があります。

コストを削減するためには以下の方策が考えられます:

  • ベンダー間の競争を奨励する。
  • EMデータの保存期間を制限する。
  • レビュー対象とするEMデータのパーセンテージを減らす。
  • 重要イベントにフラグ付けする人工知能テクノロジーを組み込み、活動に応じてファイルサイズや画像レートを縮小し、レビュー対象のビデオ記録をカットする。
  • 主要会議の間に利害関係者の作業部会をスケジュールする。
  • 科学スタッフを活用して、政策文書の作成を支援する。

プログラムの進化

RFMOでEMプログラムが導入されたら、利害関係者がシステムでの経験を積んだ後にフィードバックを組み込む仕組みを確立します。漁業条件が変化しても効果が持続するようにするためには、定期的にプログラムを評価することが重要です。レビュープロセスにより管理者はプログラムを確実に成功させることができるため、業界の追加支援を確保することにもつながります。この評価はRFMOが予想しなかった問題に取り組み、新しいテクノロジーの導入方法の効率性を改善し、データ分析プロトコルを改善するのに役立ちます。

国内法

政府はプログラムを成功させ、国内の漁船団全体にEMシステムを導入できるように、国内の漁業規制を修正したり、採択したりする必要があるかもしれません。4このような措置は、EMプログラムを設計し、導入するためのRFMOの努力と並行して承認されるのが理想的です。 

まとめ

EMプログラムの構成方法に関する決定は、設計プロセスの他のほぼすべての要素に影響を及ぼします。誰がプログラムを監督するのか、EMシステムをどのように設置、維持するのか、誰がコストを負担するのかを決定することは重要な検討事項で、様々な利害関係者グループの役割と責任を決定するのに役立ちます。RFMO規制を国内で導入できるように、国内法を整備する必要があります。最後に、プログラムを頻繁に見直して、効率的に運営され、目的を達成しているかどうかを確認します。 

巻末の注

  1. The Pew Charitable Trusts, “How to Review Electronic Monitoring Data While Safeguarding Privacy,” (2020), pewtrusts.org/ElectronicMonitoring.
  2. The Pew CharitableTrusts, “Options for Collecting, Transmitting, and Storing Electronic Data,” (2020), pewtrusts.org/ElectronicMonitoring.
  3. M. Michelin, N.M. Sarto, and R. Gillett, “Roadmap for Electronic Monitoring in RFMOs,” CEA Consulting (2020), https://www.ceaconsulting.com/casestudies/the-pew-charitable-trusts.
  4. Ibid.