資源の枯渇が深刻化している太平洋クロマグロについての緊急協力要請

マグロを管理する国々にとっては、危機的状況から脱却するための思い切った対策を取ることが極めて重要

資源の枯渇が深刻化している太平洋クロマグロについての緊急協力要請
Pacific bluefin tuna

キャプション:写真のような太平洋クロマグロの個体数は元々いた個体数のわずか2.6%にまで減少した。

© Ralph Pace

太平洋クロマグロの運命は極めて危うい状況にある。過去数十年にわたって乱獲され、管理が不適切であったため、マグロの象徴たるこの種属は過去最高のレベルから97%以上減少している。それでも国際漁業管理者たちの間で太平洋クロマグロを健全なレベルに回復させる計画にここ何年も合意が得られていない。

8 月 28 日から 9 月 1 日にかけて、太平洋クロマグロの共同管理を担当する中西部太平洋まぐろ類保存委員会 (WCPFC) の北小委員会と全米熱帯まぐろ類委員会 (IATTC) は韓国釜山で会合を開くが、長期的な方向性を変える計画に同意するか、さらに枯渇していくリスクを受け入れる必要がある。

これら 2 団体の第2回目となる本会合では、今まさに緊急な行動が求められている。2017 年には日本とメキシコの両方が年間漁獲量の規制の上限を超過し、日本の水産庁によれば 100 トン超の太平洋クロマグロが報告されていない漁業または違法な漁業によって漁獲されている。

資源の枯渇が懸念される状況にあっても、太平洋クロマグロを漁獲するそれぞれの国と漁業者が目標達成に尽力することで、個体数を回復させることは可能だ。お手本となる事例がある。上記の国々の多くが漁獲してきた太平洋クロマグロに類似の種属に大西洋クロマグロがあるが、何年もの乱獲により個体数は減少していた。それでも、漁業管理者が漁獲量の規制を設定する際に科学者の助言に従ったため、最近では個体数の増加がみられている。WCPFC および IATTC のメンバーは太平洋クロマグロに関しても同様の結果を達成できるはずである。ただし、それには潤沢かつ強靭な個体群を目指して科学に基づく規制と復元目標に同意するなら、という条件がつく。残念ながら、現在に至るまで太平洋クロマグロの管理に責任を持つ国々はこの課題に正面から取り組むことなく、個体の減少が続くままにしてきた。

WCPFC および IATTC は復元計画およびその時期を選定する公式な期限を設けているが、いずれの団体も行動を起こしておらず、漁業を持続させていくことよりも外部の政治工作や経済的な思惑を優先させてきた。

このような手ぬるい現状を打開するため、委員会は 2034 年までに太平洋クロマグロを過去のレベルの 20% にまで復元することに合意すべきである。この割合はクロマグロのような種属について多くの科学者がふさわしいと考える最低限のレベルである。委員会はまた漁獲量の上限を設けて乱獲をただちに終わらせ、規制を超過した際の罰則や罰金を定め、復元目標の 6 割に満たない可能性が生じた際に漁獲量をただちに削減することに事前に同意すべきである。

またWCPFC と IATTC にとっては、従来型の年間漁獲量の上限を設定して規制遵守する努力ベースでの管理から、漁獲戦略という近代的なシステムに移行する良いタイミングでもある。この戦略では、関係者が漁業および漁業を健全なレベルに控えるための行動に関する重要な管理目標について、事前に合意することを義務付けている。漁獲枠の交渉は、議論が対立して時間がかかることが多く、乱獲につながりかねないが、漁獲戦略の推進は、そうした交渉を回避するのに一役買っている。

太平洋クロマグロの資源回復の道においては、短期的には漁獲量を削減する必要があるかもしれないが、そうしなければ、資源が完全に枯渇し、商業漁業が消滅してしまうというさらに悲惨な結末となる。今度の会合に出席する管理者たちが資源の復元と回復を目指す何らかの約束を交わすことができない場合、WCPFC および IATTC の管轄海域において太平洋クロマグロの漁の一時停止、または必要ならば国際取引の禁止を実施すべきである。太平洋クロマグロは危機的状況にあるものの回復は可能であることは科学的に判明している。国際管理者は政治的な駆け引きを棚上げし、手遅れになる前に一丸となってこの貴重な種属を回復させなければならない。

世界マグロ保全 ディレクター Amanda Nickson(アマンダ・ニクソン)