電子監視は水産業サプライチェーンの関連組織全体の役に立ちます

テクノロジーを広範に普及させることで、漁業のサステナビリティ、トレーサビリティ、コンプライアンスの改善を図ることができます

電子監視は水産業サプライチェーンの関連組織全体の役に立ちます
The Pew Charitable Trusts

このファクトシートは、地域の漁業管理組織が電子監視プログラムを開発する際に考慮すべき重要な事項をまとめたシリーズ です。詳細については、pewtrusts.org/ElectronicMonitoringを参照してください。

概要

2018 年に国際取引が行われた漁獲量は 6700 万トン、金額にすると 1640 億ドルでした。1責任ある漁業による魚介製品への需要が世界的に高まっている中で、水産業サプライチェーン内のサステナビリティと透明性の向上が叫ばれています。

世界で最も価値の高い海洋生物の監視責任を負う地域的漁業管理組合(RFMO)は、これまで長年、人間の監視官がデータを収集し、管理決定事項を通達する制度に依存してきました。こうした制度は効果的な漁業管理

に必要不可欠なツールであることは確かですが、人間の監視官だけでは漁業活動を 100% 完全に網羅することは困難であり、不可能な場合もあるのも事実です。

包括的な電子監視(EM)制度(データの収集やレビューについて明確な目的と基準を設けた制度2)を導入することで、既存の監視制度を基礎として RFMO が監視範囲を広げ、持続可能な管理ソリューションの支援を行うことが可能になります。漁獲の水揚げ、仕入れ、販売などに携わるサプライチェーンの生産者、流通業者、小売業者は、RFMO が実施する EM 制度に直接的な利害関係があり、重要な役割を担います。

電子監視で漁船操業の向上と透明性の強化を図る

EM 制度は、漁業活動と漁船操業を継続的に 100% 完全網羅することが可能です。漁船の船主や船長はこの   テクノロジーを使って水揚げした漁獲や混獲、漁業活動の追跡と報告を行い、RFMO や漁業組合が設ける規制や海産物調達方針を遵守していることを証明できます。さらに EM によって、船上での違法行為の発生が減り、違法、無報告、無規制(IUU)漁業で水揚げされた海産物がサプライチェーンに流入しなくなることも期待されています。

EM 制度で、船舶間での漁獲物の積み替えに対する監視の目も強化できます。積み替えに対する監視の目が十分に行き渡らないと、不正な漁獲から生じるロンダリングといった違法行為を見逃しかねません。EM は、漁業管理者をはじめ、商品の積み替えを行うなど、水産業サプライチェーンに重要なつながりを持つ他の業界関係者が合法的に活動していることを証明するときにも役立ちます。

EM 制度は規制やエコラベル認証コンプライアンスの証明が可能

包括的な EM 制度は、海産物の仲買人が国際的な輸入および/または国内の規制を順守していることを確     認し、商品が持続性のある方法で調達されていることを示すのに役立ちます。

また漁業団体がエコラベル認証(海洋管理協議会や漁業改善プロジェクトなど)の取得を目指す場合、EM 制度は認証の取得に必要な RFMO の保全管理措置、データの収集要件、その他の責務の遵守に基づくサステナビリティの証明にも活用できます。

(表 1)内の規制や EM の活用法の例

国内または輸入の規制

仕組み

EM の活用法

米国海産物輸入監視制度

(SIMP)

この制度では、輸入業者は米国市場に卸される海産物が IUU 漁業によって水揚げされたものではないことを証明する報告書を提出するよう要請されます。

輸入業者は、漁具や保護水域の遵守、記録の受け渡しといった漁業活動に関する報告義務を果たし、情報をより簡単に検証できるようになります。

米国海洋哺乳動物保護法

この法律は生態系に基づくアプローチを海洋管理に義務付け、海洋哺乳動物

の捕獲と輸入の一時停止(moratorium)を含みます。

海洋哺乳動物の船上での適切な処置や放流手順など、混獲削減措置の効果を証明できます。

欧州連合(EU)IUU 規制の「カーディングスキーム」

このスキームは、IUU 漁業を防止する国際的・地域的な規則を EU 非加盟国が遵守しているかどうかを評価するものです。遵守していない国に対しては、魚介製品の輸入禁止措置を講じます。

EM により、国が漁獲の合法性や漁船団の効果的な監督を証明するために必要なデータ収集について監視の目を強化できます。

EU 共通漁業政策(CFP)

CFP は、EU 加盟国の漁業に関する規則です。これには、漁獲枠が決められたすべての魚種の陸揚げ時に文書化を要請する陸揚げの責務(LO)が含まれます。

EM は、漁獲保有規制や LO への遵守を強化するために役立ちます。さらに EM により、魚種資源査定や保護種の混獲削減対策に必要な堅牢で検証可能な漁獲データを入手し、EU 船籍の漁船が資源の回復を促し、持続可能な漁法による操業を促進するような管理決定事項を通達することもできます。

© 2021 The Pew Charitable Trusts

RFMO を通じてサプライチェーン内の関係組織への EM 制度の導入を促進する

サプライチェーン内の関係組織は、EM テクノロジーのすみやかな導入と実装に重要な役割を担っています。水産業界の会社は、監視の改善と対象範囲の拡大を図る基準や対策を含めて、国や RFMO が EM 制度の導入と実装を推進できるよう支援する必要があります。また、これらの会社は、政府が EM 制度を支持し、提供されたデータに基づいて管理措置の遵守を検証するよう、国の RFMO 諮問機関に積極的に参加することが望まれます。さらに市場関連組織は持続可能な調達方針に真摯に取り組むことで EM の導入を促進させ、非政府組織の連携や教育努力への支援を行うほか、声明や RFMO の書簡を通じて EM のメッセージを力強く打ち出します。

まとめ

漁業が市場におけるサステナビリティと透明性への高まる需要に応えるには、RFMO への包括的な EM 制度の導入を支援する必要があります。このテクノロジーは、漁船から店頭まで、海産物の加工会社や仲買人、小売業者を含むサプライチェーン全体に有益です。世界中の市場に持続可能な海産物を一貫して供給するには、堅牢な EM 制度の開発、導入、実装を促すことが重要なカギを握っているのです。

巻末注

  1. Food and Agriculture Organization of the United Nations, “The State of World Fisheries and Aquaculture 2020” (2020), http://www.fao.org/documents/card/en/c/ca9229en.
  2. The Pew Charitable Trusts, “5 Key Elements for Designing an Electronic Monitoring Program” (2020), https://www.pewtrusts.org/-/media/assets/2020/10/em-toolkit/toolkit_1_final_oct.pdf.
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