利害関係者への働きかけとコミュニケーション

意思決定者が透明性を確保することで電子監視の導入が促進されます

利害関係者への働きかけとコミュニケーション

このファクトシートは、地域の漁業管理組織が電子監視プログラムを開発する際に考慮すべき重要な事項をまとめたシリーズの1つです。

概要

地域漁業管理機関(RFMO)で電子監視(EM)プログラムを設計、実施する場合、プロセスの透明性が高く、 すべての利害関係者が含まれていることは極めて重要です。プログラムの開発が進むにつれ、プログラムの導入に幅広い支持を得るためには利害関係者に定期的に働きかける必要があります。いくつかの研究は、関係者による賛同がないことでプログラムの成功が妨げられる可能性があることを示しています。1 RFMOのEMプログラムは多くの国と幅広い漁船サイズ、漁具タイプ、漁場、漁獲の組み合わせを対象にできるため、手に負えなくなるほど不安が高まる前に代表的な利害関係者のグループと相談する必要があります。

表1は、共通の利害関係者、主に関心のある分野、および電子監視に関連する議題の概要を示しています。

表1

利害関係者のEMについて関心のある分野と議題

利害関係者 電子監視(EM)について関心のある分野 EMについての議題
RFMO事務局 および科学機関 のスタッフ
  • 法令遵守の改善と保全管理措置(混獲の許容など)
  • データ収集の強化(資源量評価など)
  • 監視担当者乗船によるデータの検証
  • 各種機器/漁船タイプに対応して展開すること
  • 基準の策定
  • 導入の実務面(労力とコスト) について
  • 一部の利害関係者がEMシステム を導入したがらない理由について
  • 生物学的データの収集ができな いことについて
旗国 当局担当者 および沿岸国 当局担当者
  • 漁船活動の透明性を高めること(漁獲枠や保護水 域など)
  • 漁獲の持続可能性を確保し、市場アクセスを高め ること
  • 合法的で検証可能なサプライチェーンを確保する
  • 一部のRFMOで推奨されている20%の監視担当者 によるカバレッジ要件を満たすこと
  • EMシステムの運用コストについて
  • EM要件を回避するために漁船が 公海に移動した場合、沿岸国の 収入が失われる可能性があるこ とについて
  • 国内法や規制への準拠やその 必要性について
船主
  • 監視担当者の対象要件を満たすこと • 操業を検証すること • 生産物の品質管理を行うこと • 通信追跡装置を改善する • 乗組員の監督を強化する • 漁獲の持続可能性を確保し、市場アクセスを高め ること
  • EM機器および分析の初期費用 について • 違反行為として誤解される可能 性に対する懸念について • EMコンプライアンスのための追 加要件について
主なマグロ 漁船会社
  • 合法的な漁船運航について • 漁獲量の持続可能性について
  • 機密データが公開されることへ の懸念について
船員
  • 空間の節約: オブザーバーの代わりに乗組員のため の空間を増やすこと • 操業時間のロスなど、監視担当者に関係する実務上 の問題を解決すること • 監視担当者による根拠薄弱な申し立てから保護さ れること
  • プライバシーへの配慮について • EMシステムの運用/有効性を確 保する追加作業(監視カメラのメ ンテナンスなど)について
監視担当者
  • 監視担当者の安全性を高めること • EMレビューを陸上から行える可能性
  • 監視担当者レポートの監査につ いて • 船内雇用の削減について
非政府組織
  • 監視担当者の監視範囲を拡大し、漁船活動の透明 性を向上させること • 漁船操業の持続可能性と合法性を確保すること
  • 基準の策定と効果的な実施に ついて
市場
  • 一般向けに合法的で検証可能なサプライチェーン を確保すること
  • 追加の費用について

© 2020 The Pew Charitable Trusts

連携の機会

連携プロセスの最初のステップは関連する利害関係者を特定し、働きかけの機会を創出することです。そうし た機会とは、RFMO EMワーキンググループ、利害関係者のワークショップ、EMパイロットショーケース、また は他の交流会かもしれません。トップダウンおよびボトムアップ双方のコミュニケーションを図れるように、 RFMO、NGO、または国連機関と協力してイベントを開催するとよいでしょう。こうした交流は形式に関わらず業界、政府機関、事務局に質問し、学んだ教訓を伝え、解決策を立案するためのプラットフォームとなります。

EMプログラムを設計する上で利害関係者に働きかけることは明確な出発点となりますが、プログラムの導入後もそうした働きかけが継続するようフィードバック機構を確立することも必要です。

業界の連携

システムにより操業にどのような影響が及ぶかについて業界における不透明な先行きの不安を和らげるため、EMプログラムの設計の初期の段階で船主、船長、乗組員と連携を取る必要があります。業界と政府の間でパイロットパートナーシップがあれば、EMプログラムの展開に関する意思決定に役立つかもしれません。

まとめ

EMプログラムを長期的にわたって成功させるため、漁業管理者は様々な利害関係者と協力し、フィードバックを取り入れる機会を作り出す必要があります。利害関係者に働きかける正式なプロセスは、プログラムの実施期間中継続します。

巻末の注

  1. R. Fujita et al., “Designing and Implementing Electronic Monitoring Systems for Fisheries: A Supplement to the Catch Share Design Manual,” Environmental Defense Fund, San Francisco (2018), http://fisherysolutionscenter.edf.org/sites/catchshares.edf.org/files/EM_DesignManual_Final_0.pdf.