わずかな例外を除けば、世界のどこであれ、旗国が船舶を取り締まる唯一の•機関となります。
現在、違法・無報告・無規制(IUU)の漁業は、海洋生態系と海洋の健全性に対する最大の脅威の1つとなって•います。IUU漁業では、年間最大2,600万トンの魚類が捕獲されており、合法的に漁をしている漁師や地域社会の生存に必要なものを奪い、生活を損なっています。また、こうした違法行為は人身売買、麻薬や武器の密輸•など、他の重大な国際犯罪への突破口となり、海上の安全を脅かしています。
水 産 業は地 球 規 模の産 業であるため、多くの場 合、船 舶の所有者が居 住する国、船籍国、漁 業を行う海 域を管轄する国、漁獲物の販売先となる多数の国々が関係します。各国政府はIUU漁業を防止、抑止、撲滅し、違法漁獲物が港やサプライチェーンに入るのを防ぐ政策を導入し、慣行を促進してきました。
IUU漁業への対策を効果的に進めるには、沿岸国、港湾国、市場国、旗国がそれぞれ重要な役割を果たす総合的なアプローチが必要です。このファクトシートは、漁船がどこに行くとしても関係するすべての法律や法令を確実に遵守させる主要な機関としての旗国の重要性に焦点を当てています。
旗国とは船舶が登録されている国で、公海上の船舶に対する司法および行政上の排他的権限を有する国のことです。旗国は、登録など船舶の管理事項、労働基準や権利を含む社会的要素、すべての海域における船舶の安全性など技術的事項についても独占的に管理します。わずかな例外を除けば、世界のどこであれ、旗国が船舶を取り締まる唯一の機関となります。これは旗国の責務として規定されています。
すべての国は、海岸線があるかどうかに関わらず旗国になる権利を有しており、1国家は登録時の税金や手•数料、年次検査、漁業免許、その他の許可を含め、船舶の登録から多額の収入を得ることができます。さらに、•ほとんどの国では、所有者は国籍や居住地とは無関係に船舶を登録できます。これは、船籍をめぐる零細な国際産業を活性化するための取り決めで、登録された船舶の国籍は所有者の国籍と必ずしも一致しません。
ただし、旗国としての監視や管理の責務を無視すると、違法行為が発生する可能性があるだけでなく、実際多く発生しています。また、多くの悪質な所有者や運航者が、安全、環境、または労働面で規制が緩く、法律や法令の施行が不十分な国を船籍に選んでいます。
商業漁業の関係国における4つの主な役割は次のとおりです。
わずかな例外を除けば、世界のどこであれ、旗国が船舶を取り締まる唯一の•機関となります。
旗国は漁船を効果的に管理するため、いくつかの基本的な国際的な責務を負います。さまざまな国際協定や文書に含まれるこれらの責務は、漁業活動の監視と管理、船舶の最低労働基準の確保から汚染防止や海上安全にまで及びます。
2IUU漁業を検出、抑止、撲滅するための旗国の責務と基準を確立するための主な国際的な取り決めは以下のとおりです。
これらの文書には、旗国が違法漁業の対策に効果的に取り組む方法を規定する上で重要な責務と基準のカテゴリーが明記されています。各項目には、幅広い旗国の責任範囲が示され、船舶活動の法的な管理ができるのは旗国に限られることが説明されています。
IUU漁業は多数の管轄区域が関係する複雑な問題であり、対策に取り組むには関係各国が責任をもって義務を果たすことが求められます。違法漁業のサイクルは漁船から始まり、船籍国となる旗国は船舶の活動を規制する主要な機関となります。悪質な運航者は、法令の抜け穴を利用し、法律の監視と施行をほとんど行わない規制の緩い国に船舶を登録します。
旗国が国際的な責務を効果的に履行し、国内政策を実施しない限り、IUU漁業の発生を可能にする重大な余地が残ることになります。