太平洋クロマグロは絶滅危惧種です。この貴重な魚の回復計画に関する最近の合意にもかかわらず、漁獲量は持続可能な水準の2倍以上で推移しています。また、太平洋クロマグロの漁獲量で上位を占める5か国のうち4か国において、過去2年間の漁獲量が漁獲枠を超過している事実は、ルールの順守と資源状況の改善に向けた真摯な取り組みの欠如を示しています。
9月3日から7日までの日程で、日本の福岡市で開催される会議において、太平洋クロマグロの管理当局者らは、個体数に悪影響を及ぼす日本の提案を拒否しなければなりません。この会議は、中西部太平洋まぐろ類委員会(WCPFC)北委員会第14回定例会および太平洋クロマグロの管理のための合同作業グループ会議で構成され、後者はWCPFCと全米まぐろ類熱帯委員会(IATTC)の意思決定者で構成される、資源の共同管理のための組織です。
この会議のタイミングは非常に重要です。今年の最新資源調査によれば、太平洋クロマグロの個体数は過去の初期資源量の3.3パーセントと極度に減少したままであり、2016年に実施された前回調査からの増加率は1パーセント未満です。2034年までに初期資源量の20パーセントまでに個体数を回復させるという昨年の歴史的な合意にもかかわらず、米国、日本、韓国は2017年の漁獲枠を超過しました。またメキシコは2018年の漁獲枠をすでに超えています。この魚種を深刻に枯渇させた何十年にもわたる乱獲の傾向には、未だに歯止めがかかっていません。こうした乱獲の影響は、単なる個体数の減少だけにとどまりません。研究者たちは各国がルールを守ることを前提としているため、資源状況に関する予測の精度も低下してしまうのです。
さらに厄介なことには、最新の評価結果の基となったデータに不確実性の要素が多く含まれていたため、将来の個体数の予測に大きな影響が出ました。2016年の太平洋クロマグロ加入量(新た増加した魚の推定数であり、個体数の将来的健全性に関する専門家の予測に大きな影響を与える数値)は、1つのデータポイントのみに基づいていました。また、この評価では、過去20年間に一貫して見られた水準から加入量が増加するという、過度に楽観的な仮定を行っていました。より慎重な加入量レベルを使用していたならば、現在の管理方法で2034年の期限までに回復を達成できる可能性は、わずか3%であることが判明したでしょう。
太平洋クロマグロの個体数は、最新の資源調査でわずかな増加が見られたものの、各国が乱獲を続け、漁獲枠を順守しない状況では、漁獲制限枠の引き上げなどまったく考慮に値しません。効果的な管理は、加入量が高い水準で推移するという希望的観測に基づくものであってはならず、現在および将来の状況に関する不確実性を考慮した、責任のある、持続可能な漁獲枠に基づくものでなければなりません。
今回の会議では、また、ある年の漁獲量が漁獲枠を下回った場合に、その分を翌年に持ち越すことを許可する条項が提案されます。管理当局者らはこれも否決しければなりません。これは漁業管理のベストプラクティスに反するものであり、太平洋クロマグロを取り巻く大局的な不確実性を鑑みると、さらなる乱獲を招く可能性もあります。
昨年採択された太平洋クロマグロ回復計画は、漁業が直面する問題の修復について北委員会と合同作業グループが合意可能であることを全世界に示しました。しかし、若干の個体数増加の兆候がみられただけで(それも不確実性の高いもの)、管理当局者らが漁獲枠の拡大を選択すれば、こうした協力体制は無に帰すでしょう。
今年の会議では、太平洋クロマグロの健全な水準の個体数の維持に依存する管理当局および各国は、科学的かつ慎重な管理に向けた決意を表明しなければなりません。各国政府がこの象徴的な魚種に回復の機会を与えようと考えるならば、現在の管理措置と漁獲制限枠を厳守することが必要なのです。
Jamie Gibbonは太平洋クロマグロ専門家で、Pewのグローバルマグロ保全キャンペーンのメンバーです。